公正取引委員会は、このほど、インボイス制度の実施に関連した注意事例を公表し、注意喚起を行いました。それは、一部の発注事業者(課税事業者)が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合には、消費税相当額を取引価格から引き下げると文書で伝えるなど、一方的に通告した事例が確認されたことによるものです。
※経過措置とは、免税事業者からの課税仕入れについては、インボイス制度の実施後3年間は、仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができるというものです。
このため、公取委は、発注事業者に対し、独占禁止法上問題となるおそれがあるとして、未然防止の観点から注意を行いました。
注意した事業者は、イラスト制作業者(取引の相手方はイラストレーター)や農産物加工品製造販売業者(同農家)、ハンドメイドショップ運営事業者(同ハンドメイド作家)、人材派遣業者(同翻訳者・通訳者)、電子漫画配信取次サービス業者(同漫画作家)など多岐にわたります。
今回の注意事例の公表は、インボイス制度が本年10月1日からスタートすることに関連して、独占禁止法違反につながるおそれのある複数の事例が確認されたため、違反行為の未然防止の観点から、どういった業態の発注事業者と免税事業者との間でそうした事例が発生したかということに加え、事例を踏まえた独占禁止法・下請法上の考え方を明らかにしておくこととしたものです。
公取委は、取引上優越した地位にある事業者が、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず、取引先の免税事業者に対し、インボイス制度の実施後も課税事業者に転換せず、免税事業者を選択する場合に、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、独占禁止法上問題となるおそれがあるとして、未然防止の観点から注意を喚起しています。
また、下請法上の親事業者が、同様に、経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているのに、取引先の免税事業者の下請事業者に対し、消費税相当額を取引価格から引き下げるなどと一方的に通告することは、下請法上問題となるおそれがあるとしています。
もし免税事業者で、取引先より一方的に上記のような要請があった等でお困りの場合は、中小企業庁に相談窓口が設けられていますので、まずはご相談されてください。